自動車エアコンフィルターの放射能測定
自動車エアコンフィルターの放射能測定
土壌等が放射性物質で汚染された場合に、細かな汚染粉塵が風によって巻き上げられ、遠方に移動して汚染拡大を引き起こし、呼吸により汚染粉塵を体内に取り込んで内部被曝の原因となることが危惧されています。 大気中に含まれる汚染粉塵の量を知るためにはハイボリュームエアサンプラー(粉塵収集装置)等で大量の空気を吸引してろ紙上に粉塵を捕集して調べる方法が一般的ですが、当方にはその装置がありません。 そこで、自動車エアコンフィルターに着目して、そこに捕集されている放射性物質の量を測ってみることにしました。 通常、エアコンフィルターは1年間程度で交換するのですが、そこには外気に含まれていた粉塵と共に放射性物質がトラップされているはずです。 特に、汚染レベルが高い地域で使用された場合は、エアコンフィルターの汚染度も高くなっていると予想されます。
今回、原発事故当時から福島県いわき市で使用されていた自動車に装着されていたエアコンフィルターの提供を受けたので、放射性物質量を求めてみました。 エアコンフィルターは車種によって形状が異なるため、そのまま測定用の容器に入れても測定条件が一定となりませんので、水による溶出操作を加えることにしました。
前処理と測定法
①エアフィルターの表面線量率測定

②エアフィルターの洗浄

③不溶物の分離
測定終了した洗浄水からろ過フィルター(コーヒー用ろ紙)を用いて不溶性の物質を回収した後にろ液を再度 30,000秒測定!
測定結果
エアフィルターに吸着されていた放射性セシウムの量は43.5 ベクレル(測定重量で補正)で、不溶物除去後に18.4ベクレルに減少(放射性セシウムの58%がろ紙上に回収)していることから、ろ紙上に回収された不溶性物質に放射性セシウムが水に溶けない状態で強く吸着していると考えられる。 不溶性の部分はバーミキュライト等の粘土質と推測しているが、水溶性の部分の化学形の解析に関しては今後の課題です。
今回の一連の測定ではエアフィルター表面の線量率が周囲の環境と比べて同じか僅かに高い程度で当初はほとんど汚染は無いと思われましたが、水による溶出測定を実施して放射性セシウムによる汚染を初めて確認できたので、表面の線量率のみによる判断は汚染を見逃す可能性があります。
試料名 | 測定日 | 測定重量 | Cs137
(Bq/kg) |
Cs134
(Bq/kg) |
Cs合算
(Bq/kg) |
---|---|---|---|---|---|
エアフィルター洗浄水 | 2012-09-25 | 997g | 27.4 | 16.2 | 43.6 |
エアフィルター洗浄水(不溶物除去) | 2012-09-26 | 1,000g | 11.5 | 6.9 | 18.4 |
なお、エアフィルター洗浄液と不溶物除去後の放射能比は、それぞれ(セシウム137:セシウム134=1:0.59、セシウム137:セシウム134=1:0.60)となり、原発事故初期にセシウム137とセシウム134は放射能比(1:1)で放出され減衰を考慮した測定時点(9月25日〜9月26日)での理論的放射能比(1:0.61)とほぼ一致しており、測定しているものが原発事故由来のものと確認できた。
※自動車エアコンフィルターや自動車吸気フィルター(エアエレメント)の汚染は各地で確認されておりますが、国や自治体が明確な基準・方針を定めていないため、交換作業に携わる人の被曝や、高レベル汚染フィルターの廃棄方法もわからぬまま放置されているのが現状です。
◎放射性物質で汚染されたエアフィルターの取り扱い指針(日本空気清浄協会)
★連絡先
あがのラボ (あがの市民放射線測定室) 担当:村上
0250-62-3102 / 080-3208-6563
E-mail : purplenao@gmail.com
Twitter : @purplewatch
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