かんがい用水路の堆積泥調査
かんがい用水路の堆積泥調査

その結果、採取した全ての「用水路堆積泥」から放射性セシウムが検出され、阿賀野川から用水路を経由した放射性セシウムの移動拡散が確認された。
サンプリング地点と測定法
地図に示したサンプリング地点(①〜⑥)から採取した用水路堆積泥を天日乾燥後にふるいにかけて小石等の異物を取り除き、1リットルのマリネリ容器に充填してNaIシンチレーションカウンター(AT1320A)で5,000秒測定し放射能を決定した。 セシウム放射能濃度はCs-137とCs-134の合算で表記。 検出限界値は、それぞれ Cs-137:5 Bq/kg、Cs-134:3 Bq/kg。
◎阿賀野川土地改良区
①阿賀野市沖通 :阿賀野川頭首工→右岸幹線用水路(大荒川用水路)
②阿賀野市熊堂村新田 :阿賀野川頭首工→右岸幹線用水路(高関用水路)
③阿賀野市法柳新田 :阿賀野川頭首工→新江幹線用水路
④新潟市北区上大月 :阿賀野川頭首工→西部幹線用水路(長浦1号用水路)
◎新津郷土地改良区
⑤新潟市秋葉区東金沢 :阿賀野川頭首工→左岸低位幹線水路
◎亀田郷土地改良区
⑥新潟市江南区大渕 :沢海揚水機場→阿賀1号用水路
より大きな地図で 用水路堆積泥採取地点 を表示
測定結果

この値は、阿賀野川の河川水を利用している新潟市満願寺上水場で採取された脱水汚泥中の放射性セシウム濃度や阿賀野川河川敷堆積泥中の放射性セシウム濃度と同レベルであり、際立った濃縮などは観察されていない。 今回採取した用水路堆積泥の堆積時期等の履歴が不明なので、今後の変化を予測することはできないが、阿賀野川底質泥と用水路堆積泥を継続的に測定することで、相関関係を把握できると考えている。
用水路の多くは一般住民が暮らす住宅地から離れた場所にあり、通常は水で満たされているので用水路内の堆積汚泥からの放射線による一般住民への外部被曝は殆ど問題にならないと考えれる。 しかし、流速が相対的に小さくなり泥の堆積が生じやすい用水路終末部や支線水路において、渇水期の乾燥や人為的な用水路泥の泥上げ作業により放射性セシウム泥の移動・拡散が発生すると予想されるので農作業中の内部被曝防止の観点から注意を払う必要がある。

他県の状況
河川水のかんがい用水への利用は他県でも一般的に実施されているが、直接に用水路の堆積泥を測定したデーターはほとんど公表されていない。 環境省は、汚染状況重点調査地域に指定された福島県、岩手県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県を対象に、河川・湖沼・ダム湖・溜池・海水浴場等の公共用水域の汚染状況を詳細に環境モニタリングしているので、そこから河川底質泥と河川敷土壌の数値を抜粋して表にまとめてみました。 一方、汚染度が低く、汚染状況重点調査地域から除外されている新潟県では河川等の公共用水域の詳細な調査は実施されておらず、唯一福島県を源流とする阿賀野川の河川水・底質泥の調査結果のみ公表されているので比較として表に加えてある。

汚染状況重点調査地域に指定された地域の河川の汚染状況は予想以上で、福島県、茨城県、宮城県に加えて千葉県・埼玉県・東京都を流れる河川の汚染が顕著となっている。 比較的汚染が低いと考えられていた岩手県や山形県でも河川の汚染が進行していることが示されており、多くの地域で河川を介して放射性セシウムの移動が進行していることが伺われる。
◎用水路では放射性セシウムが泥に吸着して移動するので、取水はできる限り濁りの少ない時期を選択することが必要(特に、雪溶け〜梅雨の季節に用水路水の濁りが顕著)
◎住宅地や集落に隣接して用水路が配置されている場合に、用水路水が家庭菜園に利用されているケースがある。(家庭菜園の作物は食品中の放射能スクリーニンクの盲点となっている)
◎用水路の水を部分的に引き込んだ湖沼や一般排水路の側溝では滞留が生じやすく放射性セシウム汚染泥が堆積しやすいので、思わぬ場所に高濃度の放射性セシウムが局在している可能性がある。
◎東日本大震災の被災地における放射性物質関連の環境モニタリング調査:公共用水域(環境省)
◎阿賀野川の河川水、底質及び沖合海底土等の放射能測定結果について(新潟県)
◎汚泥に含まれる放射性物質の調査結果について(新潟市水道局)
◎福島第一原発事故による新潟県への放射能の影響をとりまとめた報告書(Ver.2)(新潟県)
◎用水路堆積土砂の放射性物質測定結果について(神奈川県山北町)
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