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湖沼の放射能調査(その1)

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湖沼の放射能調査(その1)   新潟県は福島原発事故による直接的な放射性セシウム汚染は低かったものの、阿賀野川の上流部に位置する福島県の只見川・阿賀川水系の放射性セシウム汚染の影響を受け続けている。 放射性セシウムは泥成分に吸着し、 阿賀野川河川水と阿賀野川から取水したかんがい用水と共に下流域に移動し、水田・畑・湖沼などに及んでいる と考えられるが、その実態は充分に調査されていないのが現実です。 あがのラボでは、今後も長期間継続すると思われるセシウム汚染の影響を予測するために、現時点での汚染の実態を把握する必要があると考えて、これまでに 「阿賀野川河川敷堆積物」「用水路堆積泥」 などを調査してきました。 今回は、 泥成分が沈降しやすい湖沼 を対象に放射能調査を実施しました。   調査した地点は、かんがい用水と一般河川水が混合流入している 内沼(新潟市北区) と 十二潟(新潟市北区) 、かんがい用水の直接流入が認められない 瓢湖・さくら池(阿賀野市 )及び じゅんさい池(阿賀野市) 。 より大きな地図で 湖沼の放射能調査 を表示   測定結果   直接にかんがい用水の流入が認められない ①瓢湖 、 ②瓢湖・さくら池(人工池) 、 ③じゅんさい池(ため池) では、堆積物中の放射性セシウム濃度は 「検出限界未満」〜31 Bq/Kg(乾燥泥) と予想されたように低い値でした。 ただし、NaIシンチレーション測定器を用いた γ線スペクトル上にCs-137と共にCs-134のピークが明確に確認できないので、放射性セシウム汚染の原因が福島原発事故に起因するかは判断できませんでした 。 汚染度が低く「検出限界未満」となった ②瓢湖・さくら池 に関しては完全閉鎖系でその水源は天水(降雨)のみですが、 ①瓢湖と③じゅんさい池には河川水や沢水の流入 が認められますので、今後も放射能濃度の継続測定が必要と考えています。    かんがい用水と一般河川水の流入が認められる ④内沼 と ⑤十二潟 では、閉鎖系と比べて汚染度が高くなっていると予想していましたが、実際には 77 Bq/Kg(乾燥)と「検出限界未満」 という低い値に留まっています。  ④内沼と⑤十二潟の底質泥を採取できる場所が流...

かんがい用水路の堆積泥調査

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かんがい用水路の堆積泥調査   あがのラボでは、農業用水路を経由した「放射性セシウム汚染泥」の移動実態を調査するために、阿賀野川や小阿賀野川の水を灌漑用水として配水している阿賀野川土地改良区、新津郷土地改良区、亀田郷土地改良区が管理する地域を調査対象に選び、流れの緩やかな終末部の農業用水路に堆積している「用水路泥」を採取して放射能測定を実施しました。   その結果、採取した全ての「用水路堆積泥」から放射性セシウムが検出され、阿賀野川から用水路を経由した放射性セシウムの移動拡散が確認された。     サンプリング地点と測定法   地図に示したサンプリング地点(①〜⑥)から採取した用水路堆積泥を天日乾燥後にふるいにかけて小石等の異物を取り除き、1リットルのマリネリ容器に充填してNaIシンチレーションカウンター(AT1320A)で5,000秒測定し放射能を決定した。 セシウム放射能濃度はCs-137とCs-134の合算で表記。 検出限界値は、それぞれ Cs-137:5 Bq/kg、Cs-134:3 Bq/kg。   ◎阿賀野川土地改良区     ①阿賀野市沖通    :阿賀野川頭首工→右岸幹線用水路(大荒川用水路)     ②阿賀野市熊堂村新田 :阿賀野川頭首工→右岸幹線用水路(高関用水路)     ③阿賀野市法柳新田  :阿賀野川頭首工→新江幹線用水路     ④新潟市北区上大月  :阿賀野川頭首工→西部幹線用水路(長浦1号用水路) ◎新津郷土地改良区     ⑤新潟市秋葉区東金沢 :阿賀野川頭首工→左岸低位幹線水路 ◎亀田郷土地改良区       ⑥新潟市江南区大渕  :沢海揚水機場→阿賀1号用水路 より大きな地図で 用水路堆積泥採取地点 を表示 測定結果       用水路堆積泥(①〜⑥)から検出された放射性セシウム濃度(Cs-137+Cs134合算)は、161〜371 Bq/kgとなった。    この値は、阿賀野川の河川水を利用している新潟市満願寺上水場で採取された脱水汚泥中の放射性セシウム濃...

河川汚泥中の放射性セシウム濃度の経時変化

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河川汚泥中の放射性セシウム濃度の経時変化     福島第一原発事故により放出された放射性物質の中で放射性セシウム(Cs-137, Cs-134)は阿賀野川河川水中の粘土成分(バーミキュライトやモンモリロナイト)に吸着され福島県会津地方から新潟県へと移動していることが明らかとなっています。 阿賀野川の河川水は、流域の市町村の上水道原水として利用されているだけでなく、農業用かんがい用水としても広く利用されていますので、長期にわたる水田への汚染泥の沈着が懸念されています 。      新潟市が公表している データー を使って、 満願寺浄水場(阿賀野川下流域) で採取された汚泥中の放射性セシウム濃度の経時変化をグラフにしてみました。 福島第一原発事故直後の昨年5月末〜6月初頭にセシウム濃度が大きく増加し( ピーク① )、その後急激に減少しますが梅雨の時期にやや増加しています( ピーク② )。 昨年7月に発生した新潟・福島豪雨による阿賀野川水系(阿賀川・只見川)の氾濫による放射性セシウム濃度の増加は観察されず、むしろ減少する結果となっています。 これは、おそらく大量の雨による希釈効果によるものと思われます。 渇水期の夏場には緩やかに減少し、台風が来襲する秋口になると再度上昇しています( ピーク③ )。 河川泥に含まれる放射性セシウム濃度の増減は上流域(会津地方)での降雨等による川底の撹拌や、ダムからの調節放流などが影響すると思われますが、詳しいことは全く分かっていません。 現在は、満願寺浄水場付近では河川泥に含まれる放射性セシウム濃度が安定して 150〜300 Bq/kg(湿土 )のレベルで推移しています。       一方、信濃川水系の 戸頭浄水場 で採取された河川泥の放射性セシウム濃度変動は満願寺浄水場での変動と異なっています。 福島第一原発事故直後の昨年5月末〜6月初頭に約1,300 Bq/kg(満願寺の1/10程度)を記録したがその後急激に低下し、際立った季節変動も観察されていません。 現在は 約50 Bq/kg程度 のレベルで推移しています。 阿賀野川水系(満願寺)の放射性セシウム濃度が信濃川水系より高いこと、季節変動を伴うことなどから、上流の高汚染地帯(会津地方)の影響を受けていると考えられ継続的な監視が必要と思われます。 ◎...